研究史料の概要

舟橋・浮橋の技術文化史
―失われた橋の記憶と記録―

梗概
すでに神話時代から存在し中世時代までは、数多くの和歌に詠まれ物語にも登場していた、舟橋・浮橋の知識はすでに乏しくなり、昭和4年に編纂された『明治工業史土木篇』の明治有料船橋の記述内容に乏しく、かつ多くの誤謬が認められる。明治時代に官橋に替わってかけられた多数の民営有料舟橋史料については、埼玉県・群馬県文書館に『明治行政文書』として膨大な資料が収納されているが、翻刻利用はされていない。
同様に諸外国においても浮橋史および技術史は存在していない。翻刻・翻訳を含めた舟橋関連の刊行資料にも、明らかな誤解・誤謬が多数存在している。本著作では、舟橋・浮橋技術史と関連材料史の叙述を行い、現在存在している橋梁技術史から欠落している浮橋史および技術史を、社会史および文化史の面からの解析を加えて、新た名構築を行うことにある。

第1章:序論
世界史および各国史における浮橋歴史の現状とその位置づけを行うとともに、舟橋用語・述語の日本語における定義を行い、その用法と語源の概要について述べる。さらには、第2章以下で詳述する爾後の浮橋史の理解を深めるために、浮橋および浮体構成技術と構成材料の歴史についての、概説を述べている。

第2章:古代より中世の浮橋
日本古代の浮橋について、神話・伝承の古代浮橋史の意義に関して解説し、律令国家体制での浮橋史、平安中期における公卿日記などの舟橋記述を再検討し、日本の物語・小説の嚆矢といえる平安時代の実存と虚構としての舟橋を論考した。鎌倉時代から徳川幕府開設までの武家統治下および戦乱時代での、軍用舟橋の架橋史を戦略・戦術・政策の面で解析し、さらに中世社会における民生用舟橋について、紀行史料を用いて論考しその意義を評価した。

第3章:日本近世の舟橋―江戸幕府御用舟橋―
日本近世浮橋史のⅠとして、江戸幕府の御用舟橋の成立の背景と定義にについて述べ、関東における将軍御用舟橋(房川舟橋)については、各種舟橋絵図の調査と古文書史料とにより時代別の比較検討をおこない、舟橋構法技術の変遷要因として幕府財政が主要原因であることを結論した。朝鮮通信使用舟橋に関しては、上記将軍御用舟橋の解析手法とともに、入手できる『通信使使行録』の原文すべてを解読調査し、将軍御用舟橋の解析結果と合わせて御用舟橋技術論考を行った。係留用の苧綱・檜綱の種類・用法・製法と材料価格および施工費用に関する資料をまとめ、江戸度時代を通して幕府機密であった鎖仕様に関する解明をはじめて行なっている。さらに関東御用舟橋の古文書・絵図の」解析から、係留杭施工に「震込」構法が用いられていたことを発見し、その具体的施工に関しては工程表を作成している。

第4章:江戸文化と舟橋・浮橋
日本近世浮橋史のⅡとして、浮橋と江戸文化について述べた。参勤交代の舟橋、江戸三大舟橋、江戸時代の街道・宿場と舟橋、地名・氏名の舟橋・船橋および浮橋、江戸文芸・工芸・絵画と浮橋、明治初期に明治天皇が渡った舟橋について述べた。

第5章:日本近代の舟橋・浮橋
明治政府の道路架橋制策と民営有料浮橋、民営有料浮橋の架橋史・経営史・構法技術史について、政府の政策と具体的な民営船橋の経営に関する資料収集とその解析を行った。この目的で、全国の明治民営有料舟橋の架橋史を、水系別に悉皆調査記録しそれらの構法に関する新しい技術論的考察を展開した。さらに、大正昭和の有料舟橋史、日本近・現代文芸と浮橋、日本近代化と軍事用舟橋の発展などについての史料収集と詳細な解析記述を行っている。

第6章:中国および周辺国・オセアニアの舟橋・浮橋
舟橋用語にいたるまでわが国に影響を与えた中国舟橋について、史書と紀行・文芸・日記などの資料調査により、春秋戦国時代から清帝国時代までの中国舟橋歴史を新しい観点から論考している。さらに、入唐・入宋僧の記録、近世以降はイザベラバード、クライトナ、伊東忠太およびニーダム記述する舟橋の比較検討結果を論考に加えた。また、本章においては中国軍用浮橋を中心とした近代浮橋、中国周辺諸国とオセアニアの浮橋史についての論考を行っている。

第7章:アッシリア・ヘルシャ・インドおよびアフリカ大陸の舟橋・浮橋
ここでは、アッシリア・ペルシャ・印度の古代浮橋に関して、古代ペルシャのギリシャ侵入での2回の舟橋架橋、アレクサンドロス大王の東征と軍用舟橋の歴史史料を、各翻訳資料の舟橋構法・仕様材料の記述の妥当性を検討し、現代視点からの技術史の再評価を行なっている。

第8章:イスラム圏諸国およびオスマントルコ帝国の舟橋・浮橋
イスラム圈諸国の浮橋のうち、特に旅行記・巡礼記などの史料に記載された各地域での巡礼用舟橋についての考察を行なった。オスマントルコ帝国の舟橋については、バルカン戦争における軍事浮橋についての歴史的な構法の変遷と、イスタンブール金角湾の浮橋の変遷およびヨーロッパ列強の架橋請負の競争について論考した。

第9章:ローマ帝国および後裔国の舟橋・浮橋
ローマ帝国および後裔諸国の浮橋に関して、ローマ軍団の舟橋についてはカエサルはじめ諸史家の史料・凱旋記念塔の浮彫を始め、帝国衰亡時代の浮橋史などの比較検討により浮橋構成技術史を編纂するとともに、中世期における後裔諸国のうち、ラインとドナウの河畔のフランク王国由来諸国の舟橋史を中心として、現代に至る舟橋技術史・文化史を編纂し、特に技術史の観点からの解析を行い論考した。この中で、中世期以降のドナウと浮橋、ヴェネツィアの浮橋およびナポレオンの浮橋については詳細な記述を行っている。

第10章:南アメリカ大陸および中部アメリカの吊橋と舟橋・浮橋
本章では南米の古代メキシコ・インカ文明における浮橋史と浮体構造についての記述を行い、さらにメソアメリカのアステカ王国の橋梁を論ずるとともに、現代南米の近代舟橋を紹介している。

第11章:北アメリカ大陸の舟橋・浮橋
北アメリカの浮橋史に関して、新大陸における植民・開拓の歴史と浮橋、西部開拓史と浮橋史、北米の近代化と浮橋史、独立戦争・南北戦争と浮橋技術の発達を主題とし、特に社会要因・環境の急激な変動が浮橋技術の発展に与える影響について力点を置き論考した。

第12章:現代浮橋の現状と趨勢
現代浮橋技術の趨勢に関して、各国の技術発展の現状を述べるとともに、高強度PC構造ポンツーンに関する技術を調査し、現代浮橋の構造技術の趨勢に関するコンクリート浮体技術変の論考を行っている。各国軍事舟橋の最新技術に関する情報収集をおこない、現代浮上技術との関連性を追求するとともに、さらに環境対策としての浮橋技術の意義について述べている。

第13章:舟橋・浮橋技術史―舟橋・浮橋はどのようにして造られてきたか―
浮体構造と構成材料の歴史と推移、現代浮橋の係留・固定方式、浮体アンカー方法、連結・接合方法を系統的に分類し、古代から現代までの発展・変遷に関する技術史的論考を行っている。

第14章:舟橋・浮橋の係留索・鎖と碇・錨
浮橋主要構成材料の係留索のロープ・綱の技術史・文化史、鎖の歴史・文化史、係留索(ワイヤロープ・針金・綱・ロープ・チェイン)とその構成材料の分類および歴史的発展の叙述およびイカリ(アンカー)に関する語源的考察を行なっている。

補遺

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